初めて自分で購入した愛車は1979年式の5代目クラウンという女性オーナーを紹介します。
彼女が初めて一目ぼれした車は「デイムラー ダブルシックス」。それは高校生の時、バイトが終わって家に帰る途中、中古車屋さんの前を通った時に、店先に飾ってあった車。ダブルシックスの佇まいに心が奪われ、思わず自転車を停めて、展示車両の名前を確認したそう。
いつか乗りたいと心に決めたものの、調べてみるとATの設定しかなかったことを知る。最初のマイカーはMT車に乗りたかったこともあり、ダブルシックスはもっと年齢を重ねた未来にとっておくことにした。
免許取得後は家の車を運転しながら、マイカー資金を貯めつつ、車の雑誌を眺める日々。良いなと思う車は旧車ばかりだった。そんなある日、2度目の一目ぼれが訪れる。心を奪われた車はグリーンカラーの5代目クラウン。
「少しダブルシックスに面影が似ていて、MT設定もあり、久しぶりに胸が高鳴った。これだと思ってすぐに問い合わせたけれど、見つけたクラウンはすでに売れてしまっていました」
そこからは同じ型のクラウン探し。中古車雑誌だけでなくSNSを見回ったり、友人にも売りたい人がいたら教えてほしいと呼びかけ、探すこと2年。「そろそろ手放そうと思っている」というオーナーをインスタで見つけた。すぐにDMで連絡をとり、静岡から茨城県まで現車を見に行くことになった。
車検は無かったものの、ガレージ保管されていたクラウンはとても綺麗な状態だった。
「極上車でした。私で4人目のオーナーで、実際車に乗っていたのは初代の人だけで、他の2人のオーナーは屋内で保管している期間が長かったようです。メンテナンス情報等、記録簿も全て残っていました」
スーパーに行くのも、遊びに行くときもクラウンに乗っていく。体調を崩した中学生の弟を迎えに行くときもクラウンで出かけた。
「自分でいじることはできませんが、車屋さんに修理を依頼する際は、作業を見せてもらったりしながらお勉強させてもらっています。私が行けない時は、車屋さんがどんな作業を行ったのか詳細を教えてくださるのでそれも勉強になっています」
運転する楽しみを味わうだけでなく、車を知った上で大切にしたいと願う彼女に、改めて車とはどんな存在なのかを伺った。
「車は乗ってなんぼの道具。でも道具というだけでは片づけられない。友達のような、先輩のような、敬いたい存在でもあります。今乗っている車は、とても大事にされてきた車です。これまで所有したオーナーさんの思いも背負っているような気持ちにもなっています。大切にしつつ、たくさんお出かけをして、多くの時間を一緒に過ごしていきたいと思っています」
車を何を知らない学生の頃、車種名も分からないまま、古い車に惹かれたことを思い出しました。現代車にはないクラシックカーならではの佇まいは、その車のことを知らなくても懐かしい気持ちに包まれます。クラシックカーが持つあの独特の空気感は、いったいなんなのか。当時の作り手の思いが伝わってくるからでしょうか。きゅんとせつなくなるようなこの気持ちの正体を知っている方は、ぜひ、ビーカー編集部までメッセージを届けてください。